恋愛セミナー39【若菜下】第三十五帖 <若菜 下-3 わかな> あらすじ紫の上の容態が悪い上に今度は女三宮まで、との連絡を受け、源氏は六条院へ足を運びます。 特に具合が悪いというわけではなく、ただ顔をあわせようとしない女三宮。 なかなか戻ってこないことに拗ねているのかと思い、慰める源氏。 柏木のことに全く気づいていない源氏に、引け目を感じ、女三宮はそっと涙をぬぐうのでした。 柏木は念願をかなえたものの、心が静まることなく屋敷に閉じこもっています。 女三宮の姉である妻の女二宮のもとにもめったに行きません。 「どうして同じ姉妹なのに落葉のような方を拾ってしまったのだろう。」などと不躾な歌を詠んでいるのでした。 源氏が六条院にいるとき、突然の知らせがやってきます。 「紫の上が、たった今お亡くなりになりました。」 惑乱して二条院に戻る源氏。 邸内はごったがえし、女房は泣き喚き、祈祷の僧は、はや帰ろうとしています。 「物の怪がいるのかもしれない。」 源氏がさらに祈祷を強めさせると、ようやく女の物の怪があらわれました。 源氏だけに、と語りはじめた物の怪はまたも六条御息所。 「秋好中宮のことは感謝していますが、霊になると子のことよりも恋に破れて恨んだ思いだけが残っているのです。 しかも閨の中で私の悪口をおっしゃったので、神仏に強く守られているあなたではなく紫の上に。 どうか私の罪の軽くなる祈祷を。そして中宮には争ったり嫉妬をしないようにと。」 紫の上が亡くなったという話は世間にすぐ広まり、夕霧も駆けつけます。 柏木も二条院へ向かうと、「物の怪のせいだった。」とひどく泣いた様子の夕霧に出会いました。 自分も人に言えない恋をしているので、夕霧の様子をいぶかしがる柏木。 源氏は紫の上が生き返ってほっとするものの、六条御息所のことを思うと気が重くなります。 出家したいという紫の上には頭頂の髪を少し切り、五戒(ごかい 殺生・盗み・邪淫・妄語・飲酒を慎む)を受けさせました。 毎日法華経をあげても、物の怪はあらわれ続けます。 紫の上の容態が悪くなると、身も世もなく悲しむ源氏。 源氏をこれ以上悲しませたくないと、治ろうと懸命に努力する紫の上。 薬も強いて飲むようにしたので、紫の上はほんの少し回復しましたが、心配で源氏は六条院へはまったく足を運べません。 柏木はあれからも何度も女三宮に会いに行っていますが、心を開いてはもらえないまま。 ついに女三宮は懐妊してしまい、様子を見に源氏が六条院にやってきました。 「いま頃になって珍しいこと。」と、しばらく滞在する源氏はただ女三宮をいたわしいと思っています。 そんなとき、小侍従は柏木から文を預かり、源氏のいないときを見計らって女三宮に渡しました。 嫌がりながらも受けとる女三宮のもとに、源氏が帰ってきます。 敷物の下に文を隠して、紫の上のもとに帰るという源氏に「袖を濡らして泣けと言うの。」と引き止める女三宮。 源氏はその夜も泊まってしまいました。 明け方急いで身支度をはじめ、扇を探した源氏は、偶然あの文を見つけてしまいます。 薄緑の紙に男性の文字。そして内容から明らかに相手は柏木。 源氏が薄緑の文を広げているのを、小侍従は見つけて仰天し、女三宮を責めますが、全ては後の祭りなのでした。 恋愛セミナー39 1 源氏と紫の上 失って初めてわかる幸せ 2 源氏と六条御息所 恋の妄執 3 源氏と女三宮 知らぬ間の懐妊 4 柏木と女三宮 猫の結んだ縁 5 柏木と女二宮 落葉の宮 この世を去っても現われる六条御息所。 娘・秋好中宮のことを源氏に托したときの言葉。 「けっしてあなたの愛人にしないで。」と頼んだのは、 親としての思いよりも恋するものの魂の叫びだったのでしょう。 紫の上はすでに死を覚悟しています。 この世に戻ってきたのは、ただ源氏のため。 妻というよりは、子を思う母のような境地で持ちこたえています。 そして女三宮。 懐妊したことよりも、彼女が女性として源氏を引き止める言葉を発したことに驚きます。 無理強いされているという以上に、玉鬘と同じく源氏が男性のスタンダードである女三宮にとっては、 柏木程度のレベルではとても追いつかないはず。 ところが柏木のことを決して受け入れていないつもりの女三宮は、女性としての情緒が備わり始めていた。 自分の思いではないにせよ、柏木が繰り出す恋の言葉が染みついたのか。 重ねた逢瀬の効果なのか。 源氏はこの若い二人に、どう対してゆくのでしょうか。 |